55年前のパパとママ。

台湾に出張に行く手続きで、
白金台の台北中日経済文化代表処というとこにいった。


ここは台湾にゆかりある人にとっての役所、領事館にあたるところ。
婚姻届や子供の出生届なんかを提出したり、
パスポートやビザをとったりの手続きはここでするんだって。


両親は台湾に行くことがなかったし、婚姻届や、出生届のタイミングに
私は生まれてなかったわけで、実は白金台に来たのは今回が生まれて初めて。


役所の手続きはどこもたいてい煩雑で、雰囲気もこわばっている感じがして
苦手なんだけど。でも、そんな中、すごいものを見せてもらっちゃった。

見てみて。

その1


その2

上がママ。下がパパ。
パパとママの両親が、それぞれの出生届けで使った写真。


「これあなたのパパとママ?」
窓口に座ってる事務の担当の女性に確認されたけれど。


そんなのわかるわけないでしょ。


名前と誕生日の記録でとりあえずはそうなんだろうなってわかって、
「はい。そうです」と答えといた。


でも、見てたらこの写真が感じさせる時の経過や物語に惹かれて
しばらく写真に釘付けになってた。


「コピーしてあげようか。」
女性が私のものほしそうな顔を察してか、めがねの奥から
上目遣いでぽつりと言った。


「うん。ほしい。」
答えると、じゃあ、OKという顔をして
写真をキャビネットにはもどさず、机の脇に置いた。


しばらく私の事務手続きにもどり、大方の申請書類を処理しおわると、
やがて女性はさっきの写真を持って窓口の奥の部屋に行き、
コピーをとってきてくれた。



「かわいいでしょう。」
戻ってきた彼女ははさみでちょきちょきパスポート写真サイズ(4×5くらいかな)
に切って、パパの写真、ママの写真を左右にならべると、
丁寧にも別の紙を台紙にして糊ではって渡してくれた。


いいもんもらっちゃった♪


肝心の事務手続きのほうは、実は書類が足りないのがあって、
ちょっと難航したのだけれど、写真のやりとりでなんだか
向こうの女性が親近感を覚えてくれたらしく、上の人に頼んで
あとから足りない分を送ってくれれば、OKということになった。


緊張してても、状況を楽しめる時には楽しんじゃえ。
ということで。
ほんとだったら、超事務的な、面白みなんてまったくない
訪問だけど。結構思い出深い一日になった。


           ☆☆☆

うちに帰って、パパとママに写真を見せたら。
「ママお嬢様だったのよ。椅子に腰掛けて、ほら、お姫様見たいでしょ。」とママ。
「これ顔だけだけど、このときはたぶんくまちゃんを抱いてたんだ。」とパパ。
懐かしそうにお互い自慢しあいっこしてた。
今はじいさん、ばあさんだけどね。


50数年前のパパとママは確かにかわいかった。