ネイルサロン

つめ

自分でマニュキアを塗るとどうもうまくいかないのである。
塗り終わるか終わらないかというタイミングに限って
なぜかトイレに行きたくなってしまう。
トイレに行って、なるべく爪に触れたりしないよう気遣っているつもりが
ついつい下着やスカートを上げるときに爪に触ってしまう。
えーい、もう寝てしまおうとお布団に入ろうとすると、布団をめくるときに
またまた爪が触って、せっかく塗ったエナメルるがよれてしまったりしてしまうのだ。


ということで、ネイルサロンなるものに行ってみた。
プロの技をみてやろうじゃないか。

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二子玉川高島屋。午後7時半。セレブの奥様に人気のエリア。乳母車を押し、シャネルやグッチのミニバックを肩にかけてるような女性が目立つ街。
ここで塗ったマニュキアなら、きっとうまくいくに違いないわ。


「いらっしゃいませ。今日は何にしましょうか。」
にこやかに店員の女性が声をかけてきた。名札を見ると
伴さんとある。同じ一文字苗字にちょっぴり親近感。


「初めてなのでお任せします。」
わからないときは正直に、でもどうどうと。


マッサージ、スカルプチュア、ネールアート、などなど
なんだか盛りだくさんのメニューを見ながら、
あくまでも今日はベーシックに、ということで
ネイルケアとカラーというのをお願いした。


腕時計、ブレスレットの類をはずしカウンター席に座る。
マンツーマンのおすし屋さんに座っているような感覚だ。


まずは爪の形を整える。先が平らのスクエアカット、
すこし角を落とすオーバルカットなどがあるけれど、
スクエアで。爪切ではなく紙鑢を使う。
しゅっ、しゅっ、しゅっと爪に鑢を一定の力で当てていくと
爪が削れ細かい粉が出、徐々に形が出来上がっていく。

次に甘皮を処理。これは爪の付け根の部分の余分な皮を小さなペンチのようなもので
取り除くこと。これをすると爪全体がすっきりし、多少なりとも大きく見える。


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一通り甘皮処理まで終えるとネイルボールという銀のお椀大のボールに
熱めのお湯を張り、中に爪をつける。これで爪の周りについた粉やごみが
とれ、爪が柔らかくなるらしい。
蒸しタオルで拭く。これがなかなか気持ちいい。爪だけ温泉旅行に行った気分だ。


しかし、すぐ現実に引き戻された。
カラーを塗る前にお会計なのだ。
ケア、カラー合わせて4500円也。
高いか安いか。これは次にほかのところにいったら判明するだろう。




ベースコートをぬる。
「パールの細かい粉が入っているんですよ。爪はたてに筋が入っていますが、
このパールの粒子のベースコートを塗ることで、滑らかになり、カラーの仕上がりが
全然違ったものになるんですよ。」
商品アピールも忘れない伴さん。


いよいよカラー。「どの色にしますか」と入り口で聞かれてから、
「優柔不断なので、おいおい決めていきます」と席に座ったものの、
今の今まで迷ってた私。

透明のアクリル板におよそ100種類はある付爪がグラデーションで並べてある
パレットをじっと見つめ、結局はベーシックといってもせかっくサロンに
きたのだから普段使わない色がいいんじゃないかしらと思い、「これ」と指さしたのは
「パープル」。いや、薄いピンクに見えたんですけど....。
「パープル」。

ま、いいか。

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爪楊枝大の刷毛をしごきながら、右小指から塗っていく。
でもね。ここからが悲劇です。


鼻がむずむずしてたんです。ちょっと前の日、風邪気味かなって感じだったんです。
きづくと


ハックション!


大きなクシャミをしてしまいました。


「ひええ」伴さんの小さい悲鳴。
突然の揺れに今塗っていた中指のネイルがぐしゃっ。


塗りなおし。リムーバーで落とし、もう一度、ベースを塗って。
10分のロス。


でも、まだ鼻むずむずしていたんです。
「鼻かみますか?」今度は慎重にと伴さんはティッシュを提供。
「爪には触れないようにしてくださいね。」

手を自由に使えず鼻をかむなんて。
手の甲ではさむような不恰好な私。見られたくないわ。こんな姿。


とりあえず、これ小事件。


無事全部の指に塗り終わり、トップコートを塗りました。
完成です!!

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ん。きれいです。途中、悲劇はありましたが、美しいです。



時刻は8時40分。
一時間弱、かかりました。


バックと、お買い物をした紙袋。そして雨が降ってたので傘。
「お手伝いしますね」と伴さん。
完璧に乾燥した後に帰してくれるわけではないのである。


「手は周りに触らないようすぼめておいてください。
40分くらいはそのままにしてください。
傘を差すときはガードマンさんに頼んでください。


はい。では。ありがとうございました。またぜひお越しくださいね。」



いや、いつも、苦労するのはここからなんだけど.....。
さわやかに見送る伴さんを尻目に、
ちょっとブルーな私。
もう帰ろうと思ったんだけど。40分。
待てるわけないのです。

結局、ちょこちょこ気を使いながら高島屋を後にし、
駅に向かい、改札へ。


定期をそっとだすときに
「しまった」


親指のネイルが早速よじれてしまったのである。
カッコワル......。


ネイルは気持ちの余裕がないといかんのです。
余裕のある人は、家でもサロンでも、うまくいくのです。

教訓:ネイル塗ったら安静にしなさい。