モノレール

くるま

モノレールが好き。
窓を見ていると、嫌なものはすっかり地上に置き去りにして
どこか遠くの世界へ行けるような気分になれるの。
魔法の絨毯に乗った感覚に似てる。
すごく心地いい。



魔法の絨毯といえば、ディズニー映画の「アラジン」。



突然町で出会ったアラジンに
「Trust me」って手を差し出されて、プリンセスジャスミンは一瞬とまどって、
でも結局彼を信じることにして、手を握るの。そして二人は魔法の絨毯に乗って
空を飛んでいくんだ。



「誰か、自分ではなかなか変えられないこの環境から連れ出して」
ってよく思うことが多かった、当時高校生だった私は、
アラジンを繰り返し繰り返し見てはWhole New Worldをよく聞いていたっけ。
それからしばらく経ったある時、モノレールに乗った感覚が、魔法の絨毯の上にいるそれとすごく近いことに気付いた。以来、モノレールが大好きで、乗るたびに一瞬だけれど、異空間への小旅行ができることを密かに楽しんでいた。



いつしかそんなことはすっかり忘れてしまい、交通手段のひとつでしか過ぎなくなっていたのだけれど。先週、数年ぶりにモノレールに乗って、
窓を見つめていたら、ふと昔のそんな記憶と感覚がよみがえってきた。

「私は、これから違う世界に行くんだわ。連れ出してもらうの。」
空港行きのトランクやビジネススーツに包まれた男性のにこりともしない表情のそばで、一人胸躍らせていた。
「このままどこにも停車せず、どこかへいってしまえばいいのに」と願っていた。




すぐにモノレールは目的地についてしまい、私の妄想ははなかくも消えてしまった。それでも、その後も、なんだか胸にひっかかりがあり、数日たっても忘れられないで、繰り返し繰り返し思い出している。

 私にはモノレールが必要だったんじゃないかしら。何か、逃げたくてたまらないものがあることに気付けというお告げなのではないかしら。だれかに救ってほしいと願っているのではないかしら。

問いかけながら、きっと今日も私はモノレールではなく、いつもの満員電車に乗るんだろう。