世界一美しい絵

韓国からの童話を紹介します。

あるところに、屋台で肉まんを売っている女性がいました。
美術学校に通う娘のために、毎日、毎日一生懸命働いているのでした。
娘は絵が大好きで、いつか作品展を開きたいと思っているのでした。

ある日の夕方、いつものように女性が肉まんを売っていると、
雨が降ってきました。(いけない、娘は傘を持たずに学校へ行ったんだっけ)
母親は傘を持って、娘の通う学校へ向かいました。

けれども、学校のそばまで来て、母親は思いました。
こんな汚い格好をしていたら、なんて恥ずかしい母親なんだと、
きっと娘を傷つけてしまうに違いない。

娘のいる学校に着き、校庭から娘のいる教室を見あげると、
ちょうど窓際に座っている娘と目が合いました。けれども、案の定、
娘はそこから傘を取りに降りてくる風でもなく、
ちらっ、ちらっと母親を見てはまたぷいと前を向いてしまうのでした。

母親はやりきれない気持ちになって、傘を渡せないまま、
とぼとぼ帰っていったのでした。


そんなある日、娘の学校で展覧会が開かれることになりました。
娘は母親に、ぜひ来てほしいと誘いました。
もちろん母親は、行きたくて行きたくてたまりませんでした。
でも、娘に恥ずかしい思いをさせたくなくて、
結局仕事があるからと断ってしまったのでした。

展覧会の当日。いつものように、母親は肉まんを売っていました。
でも、本当は、娘の展覧会に行きたくて行きたくてたまらないのでした。
そんな様子を見てか、母親の事情を知っているお客さんたちは、
自分たちが店をみてやるからと言って、押し出すように母親を
学校へ向かわせました。

夕方の学校。ほとんどの人が帰ってしまった後の展覧会の会場で、
母親は娘の作品を探しました。
(娘の書いた作品はどれかしら?)
そして、娘の作品を見つけた母親はぽろぽろと涙を流し始めました。
絵のタイトルは《世界一美しい絵》。
そこにはなんと、教室の窓から見下ろした、いつかの雨の日に傘を届けた
母親の姿が、書かれていたのでした。

気づくと母親のそばには娘が寄り添っていました。
二人はずっと絵を眺めていました。