南十字星

劇団四季南十字星を見た。

南十字星』は、『ミュージカル李香蘭』『異国の国』に続く太平洋戦争の悲劇を描いた昭和三部作の完結編に位置づけられている。インドネシアに出征し、BC級戦犯として裁かれて散っていった青年、保科勲の生き様を描き出した作品。

インドネシア人の恋人リナの清らかな歌声と、華やかな民族衣装をまとった祭りの場面、インドネシア、京都と瞬く間に場所を変えていく見事な舞台展開が印象的だった。

二幕の保科が兄の罪を被りBC級戦犯として誤解が解かれないまま絞首刑の処される場面は涙なしでは見ていられない。

「保科は、インドネシア人にも、オランダ人にも、日本人にも、誰に対しても優しかった。」「あなたは私たちを助けてくれた。なぜ、死なねばならない?正直に本当のことを話して。」口々に彼の無実を訴える周囲の声も虚しく、死刑の宣告は変わることがなかった。

彼自身も死ぬ間際まで、自分の死に疑問を感じ続けていた。しかし、処刑間際に書いたと思われる、本の片隅にあった走り書きには、こうかかれていた。

「死を受け入れることができなかった自分だが、ある朝目覚め、光差し込む監獄の中で、木々の葉のこすれあう音を聞いた。生命の尊さを感じることができた日だった。そして、処刑の日。必死の覚悟でリナは監獄まで僕に会いに来てくれた。恋人の愛に包まれて死ぬことができてなんて幸せなんだろうと思った。」

他にも私の心を揺さぶるセリフがいくつもあった。
「日本は大きく変わり始めている。僕の死は、その大きな変化の流れの一滴にしか過ぎないかもしれないが、その無価値の価値について考えている。」
「僕が死んだとしても、明日の若者たちが生きている。」

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つい先日インドネシアの留学生、ルワンさんと、出会ったばかりだった。流暢な日本語を話すルワンさんは、来日8年になり、この10月から日本の某有名メーカーに勤め始めたばかりだという。
「自分をうまくアピールすることで、外国人でも日本企業に必要とされ、働くことができるとわかった」「それだけじゃない。地方に行くと、都会ではなかなか体験できない住民の本当の暖かさに触れることができるんだ。」熱く語るルワンさんの言葉に戦争の爪あと、日本人を非難する気持ちは微塵も感じられなった。

「この前の地震。留学生にとっては初めての経験だったし、夜も遅くて回りに日本人もいなかったから、どうしていいのかわかんなくって、留学生はみんな町中あわてて
走り回ってた」と笑って語っている彼を思い出すにつけ、私は思った。
戦争を乗り越え、諸外国は日本を理解しようとする時代になってきた。それに比して自分は同だろう。アジア諸国の歴史も、そこで日本人がどう関わってきたかに対する理解も知識もまだまだ足りない。

アジアをもっともっと知りたい。そんな風に強く思いたった一日だった。